編集後記



編集者:佐藤由紀子

編集後記1 版権取得のきっかけ


 生身のジェフ・ホーキンスに会ったのは2000年10月、Visor Prism発表のためにロブ・ハイタニ氏などとともに来日したときでした。CNETの記事などを読んでファンになっていた私はどきどきしながらのっぽの彼に接近。ハンドスプリングのロゴ入りダンガリーシャツを着たジェフ様は、気さくな笑顔で名刺交換に応じてくれました。持っていたのはVizor deluxだったと思います(うろおぼえ)。わたしはVxを使っていたので「Visorじゃなくてごめんなさい」と言ったら、「でもそれは僕がデザインしたんだよ。僕もそれは気に入ってる」と答えてくれました。当時は彼を「パームを創立してなぜかそのあとハンドスプリングも作ったひと」としか認識していなかったので、デザインまでするのかー、と、ちょっと意外でした(その頃「シンプリー・パーム」が出ていれば!)。「自伝を書きませんか? 誰か伝記書いてないんですか?」とたずねると、「書いてないと思うよ(にっこり)」とのお返事。「いつかあなたの伝記が出たら翻訳しますね」と言ったら肩をすくめて笑ってました。Palmのインサイドストーリーが書かれている、という噂をみつけたのは、その1年後でした。


編集後記2 版権取得しちゃった


 Piloting Palmをいつどこでみつけたのかはっきり覚えていないのですが、2001年11月の中旬、たぶん米国の噂サイトかなにかでだったと思います。ずっとパームの本を探していたし、なにより著者の一人がDavid Pogueだと知って、絶対やりたいと思いました。以前彼の著書(マックの入門書)の翻訳版を出していて、話の展開のうまさや楽しい語り口のファンになっていたからです。

 さっそく原書出版社に問い合わせたところ、まだ日本の出版社はどこも気づいていない様子。この段階で版権を取れればアドバンスがかなり安くすんだのですが、企画を通すのにもたもたしているうちに他社からも引き合いが出てしまい、値段がはねあがったのは今でも残念です(それが本の定価にも反映されるわけです)。

 欧米の出版社では通常、まだ原稿がない段階から版権のプロモーション用資料を作っています。暫定的な目次とあらすじだけのものだったりするので、これだけで内容を判断することはあまりありません。でもこの本の場合は絶対おもしろいと信じて、心配顔の周囲を説得して原稿入手前に版権を買ってしまいました。一般の人(?)から見ればマイナーなテーマで、しかも時期を逸している本でしたから、当時から売れ行きを危ぶまれておりました。でも、魅力あるテーマが面白く書かれていれば、読者の支持を得て売れるのだということを、きっとこの本が証明してくれるでしょう。証明してくれますように!


編集後記3 Light Stuffたち


 入手したPiloting Palmの原稿を読みながらウェブで背景情報を検索していくと、頻繁に機長のページにぶつかりました。私もパームユーザーですから以前からパーム航空にはお世話になっていて、機長のいいものを人に伝えたいという心意気と、それを実現できる技術に惚れておりましたが、パーム コンピューティングやジェフ・ホーキンスについてもいろいろ調べていらっしゃるのは知りませんでした。それで監修は機長に、と決めたんです。超多忙なことは存じていましたが、本のためには機長に頼んで本当によかった。情報力だけでなく、文章に関する的確なアドバイスには翻訳の小林さんも敬服していました。おまけにSPFという、驚異のプロモーションをしていただいて。これはもう、機長でなければできません。

 小林さんに翻訳をお願いしたのは、多忙な機長がなるべく監修に時間をとれるように、早く正確な翻訳をあげられる人を、と考えたからです。それに長丁場の仕事ですから、一緒にやっていて楽しいほうがいいし。彼女は翻訳者としてはデビューしたばかりですが、責任感があってピンチでもユーモアを忘れないことは知っていたのでお願いしました。実は高校時代からの友人で、現在は夫君の仕事のつごうで中東在住なのです。日本にいたら八面六臂の活躍をしているはずの彼女も、かの地では時間があるだろうとの算段でした。

 カバーデザインの河井 宜行さんとは何度も一緒に仕事させていただいていて、今回もシンプルにかっこよく、というリクエストにきっちり応えていただけました。

 帯のPilotを持った写真は大金 彰さんの撮影、手タレは弊社販売営業の入山 真一です。なるべくPilotが小さく見えるように、でかくてきれいな彼の手をかりだしました。液晶のグラデーションの調節が難しく、夜のスタジオで2時間近くも辛抱強く、笑顔で撮影させてくれた営業根性に感謝。







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