ハマグリエに触ってみた。1.1

by 機長

 PalmNinja9号の計らいにより、某所で話題の新型CLIE「PEG-NR70V」を触ってきた。その感想を書く。

   その後、PalmNinja9号からの計らいにより、いくつかの訂正事項が見つかったので、青文字で訂正しておく。(2002.03.18)



●重さと大きさ

PalmOS最大の筐体サイズ(とくに縦の長さ!)と200gという重量は、スペック表だけ見るとかなり負担を感じる、とは同マシンの発売日にパルマガにも書いた通りだが、実際に触ってみると、それほどサイズの大きさは感じない。そりゃあ、旧機種と比べりゃあデカいよ。それにワイシャツのポケットに入れようとすれば、その大きさに気づくよ。でも、パッと見て、パッと触った感じではそれほどの大きさを感じない。ちょっとした面取りのアクセントなど、体積の大きさを実感させにくい、そのデザインの凄まじさにちょっと感動した。重量についても同じことを感じた。理屈では200gと聴いてはいたが、実際に触ってみると、これもデザイン上のマジックなのか、重さをあまり感じない。筐体の各部分が薄いせいか、重さを感じにくいのだ。さすがSONY、こーゆー魔法はうまいらしい。以上はお世辞でもなんでもなく感じた。ただし、冷静になれば、これを服のどこに収納すればいいのか?首から下げたら肩凝るんじゃなかろうとか、と疑問が湧いてくる。それもまた事実だ。だって現実にサイズは大きい(閉じた状態で7.2×13.7×1.7cm)し、重量は200gもあるのだから。



●NR魔法

蓋(と言ってもいいのか?)を閉じようとすると電源が落ちる仕掛けはいい。いったい蓋がどの角度になっている時に電源が落ちるのか?それを覗き込んでしまった。閉まりかけたドアを覗き込む要領で。傍から見るとかなりマヌケかもしれないが、気になったもので。結局、その微妙なタイミングは不明のままだったが…。同じように、水平に回転する液晶部分をクルクルと回してみる。すると、ハードウェアキーボード用の配置(ノートパソコンっぽい使い方の配置:SONY用語では「オープンスタイル」というらしい)から、仮想Graffiti用の配置(普通のPalmOSマシンっぽい配置:SONY用語では「ターンスタイル」というらしい)になる間に今度は液晶内の画面の上下が逆転する。



前者ではハードウェアキーボード側に画面の底が来るのだが、後者ではそっちが画面の天井が来ないといけないからだ。この上下逆転のタイミングが知りたくて、何度も何度も回転を繰り返してみる。画面をしっかりと覗き込みながら。これもかなりマヌケな仕草だが、結局、ここだ!というタイミングはわからないまま。とにかく、回転するたびに液晶内の画面の上下が逆転するのが面白くて、何度も何度も液晶分を回転させてしまった。



●ジョグダイヤルの位置

ジョグダイヤルは、ターンスタイルの場合は、これまでとほぼ同じような位置に来るようにはなっている。やや狭い筐体の側面を使って配置されているその姿にはちょっと感動すら覚えるのだが、その微妙な位置やサイズについては、個人的な好みが別れるかもしれない。ところで、オープンスタイルの場合のジョグダイヤルについては、ちょっと謎も多い。オープンスタイルのまま机の上に置いて使用する場合には地面ギリギリの高さにあるジョグを操作するのは、ちょっとありえない気もする。それよりも、ハードウェアキーボードの真上にあるハードウェアの上下キーを使った方が賢明かもしれない。でも、それにしては微妙な位置と言えるかもしれない。それなら、ハードウェアキーボードだけで上下移動も含むすべての操作が出来たらいいのに、と思った。(あ、もしかしたら上下キーとかで出来るのかな?その確認は忘れてた)また、オープンスタイルを両手の指で固定して使う場合、これもジョグダイヤルの使い方は難しい。もしかしたら慣れてくると使えるのもしれないが、この場合も別の方法を模索してしまうそうだ。(あ、そうそう、ジョグダイヤルには今回もBACKボタンがついてくる)

 

●揺りかごの重心

液晶部とハードウェアキーボード部を開いた状態、つまりオープンスタイルで、水平なテーブルの上に置いてみる。微妙なバランスで、ちゃんとハードウェアキーボード部がテーブルの上に落ちて、液晶部が浮かび上がる。触った感じではその重量差はよくはわからないのだが、ちゃんとそうなるように重量差をつけてあるらしい。もしもこの重量差がついていなかったら、ハードウェアキーボード部をちゃんとテーブルに押し付ける鉛のメモリースティックが売れたかもしれないが、その必要はないようだ。

●赤外線ポート発見

とにかく、狭い筐体のすべてを使いきったデザインなので、どこに赤外線ポートがあるんだろう?と焦って探してしまった。Tシリーズならメモリースティックスロットの横についていた。それが見当たらない。気がつくと、メモリースティックスロットと上下で並んでいた。本当にギリギリの尺で上下に寄り添うように並んでいる。It's a SONY! と、思わず唸ってしまった。

 ← 発見された赤外線ポート。「あっかんべースタイル」と呼んでみる。

●ハードウェアキー

感動したのは、ハードウェアキーボード部に付いているハードウェアキーだ。ちょうど、ハードウェアキーボードの真上、液晶部との接合部あたりについている。ここの上下キーは、もしかしたら、これまでのCLIEシリーズでもっともまともな上下キーかもしれない。結構大きめだ。もちろん他社製のものと比べたら、ちょっと貧相だったりもするが、CLIE史上ではもっとも押しやすい上下キーかもしれない。これらのハードウェアキー(4つのアプリボタンと上下キー)が、ハードウェアキーボード部のかなり上の方に配置されている点については、ゲームを意識しているのでは?と思った。真下についているハードウェアキーボードを無視して、ゲームに熱中するための配置としては悪くない位置かもしれない。



●逆転スタイラス

スタイラスが、PalmOS史上たぶん始めたが、筐体の右下についている。これは、オープンスタイルでも、ターンスタイルでも同じだ。ま、構造上仕方ないことなのかもしれないが、これまでの使い方に慣れている人間には戸惑う。ついつい右上を探してしまう癖が抜けないかもしれない。このマシンが初めてのPalmOSマシンだという人には問題ないのかもしれないが。



●カメラについて

カメラはそれほど凄い画質じゃないが楽しいかも。私の日常使用ではまったく必要のないものだが、アドレス帳に写真を撮り込んだり出来るのは楽しいし、仲間と写真を撮る癖がある若者には、これは楽しいだろう、間違いなく。カメラの角度もかなり自由に動くので、自分の顔を移したりすることも簡単に出来る。友達と2ショットを撮るのも簡単だということだ。で、撮ったらすぐにCLIE Paintで遊び加工も出来る。操作も簡単だ。いわゆる普通のPalmOS用アプリケーションのように立ち上げて使うことも出来るのだが、筐体の接合部についているキャプチャボタンを押すだけで、電源OFFの状態から電源がついた上にカメラ用のソフトが起動して、もう一度キャプチャボタンを押せば写真を撮ることが出来る。とっても手軽な操作だ。ただし、ちょっと気になったのは、通信電車の中で、あまりこのCLIEを持ってゴソゴソしていて、周囲にこのCLIEにカメラが内蔵されていることを気づかれてしまうと、ちょっとモメるかもしれない。とても簡単に写真を撮れてしまうということは、気をつけるべきことも増えるとは言える。痴漢行為に使うなよ!



●ハードウェアキーボード

ハードウェアキーボードについては、Graffitiに慣れている機長には必要ないと思ったが、これからGraffitiを覚えるよりも…というユーザーにはたまらない必殺アイテムだろうと思った。とくにインターネット等で特別な情報を得ていないコンシューマにとっては、Graffitiなんて言葉を聞かされるだけでもストレスの種になるだろうし、PalmOSに慣れていない量販店の店員でも説明が簡単だ。打ちやすいかどうかは練習次第だろうと思った。そこそこ研究されていそうなハードウェアキーボードだったので、練習次第ではかなり高速の入力が可能なのではないか?ただ、ハードウェアキーボードですべての操作が出来るわけではないので、そのうちショートカット等を実現するサードパーティ製のドライバみたいなのが出てくるのでは?とも思った。どうせハードウェアキーボードで操作するなら、全部操作したくなるのが人情だから。



【訂正】
 その後、PalmNinja9号から入った連絡によると、「NR70/70V」には、実はショートカットが実装されているそうだ。コントロールキーを押しながらアルファベットを押すと、ちゃんとショートカットとして動作するらしい。どうやら、Fnキーよりもコントロールキーを外側につけたのにも、その辺の事情が絡んでいるのではないか?…ということだ。未確認ながら、かなり確度の高い情報と認識している。ただし、そのショートカットがどの程度まで有効なのかは不明なまま。でも、デフォルトでここまで機能がついているなら、サードパーティによるさらなる改変も意外と簡単に出来るかも?その辺の詳細までは不明のまま。


●ターンスタイルの弱点

機長のように、古くからのPalmOSユーザーならハードウェアキーボードよりもGraffiti操作を中心に使うことになる。そうなるとターンスタイルが中心になる。どうせなら、基本はそっちを表面にして、特別にハードウェアキーボードが必要な時のみ、オープンスタイルにするという使い方をしたいが、このマシンは基本が液晶を中に向けて閉じるという形式なので、そういう使い方には向いていない。なぜなら、液晶部を外に向けたままでは、液晶部を守るものが何もないからだ。このマシンは、原則として、閉じた状態(「クローズスタイル」だっけ?)では液晶部が中を向いていて、それを開けながらクルリと回転させるのが正しい使い方だ。Graffiti中心に使うためにはちょっと面倒くさい動作が待っている。それを避けるためには、そういう用途にも対応したサードパーティ製のケースの登場を待たなければならないかもしれない。そういうケースが登場すれば、Graffiti中心の古いPalmOSユーザーにも、かなり意味のあるマシンとなるかもしれない。そうじゃない限りはハードウェアキーボード操作をベースにしたマシンと考えた方が賢明だ。



●消えたハードウェアボタン

また、機長のようなGraffiti派のユーザー、つまり、古くからのPalmOSユーザーの場合、ターンスタイルの場合、ついつい上下キーなどのハードウェアキーを探してしまうのを禁じえない。そこには当然のように仮想Graffitiがあるのだが、さすがにハードウェアキーまでは存在しない。予定表やメモ帳などの主要アプリへの移動のためにハードウェアキーを使えないことが、ちょっと戸惑ったりする。さすがに仮想ハードウェアキーは存在しないから。

●仮想Graffitiのまばたき

仮想Graffiti部分は、そのアプリケーションの階調に合わせて、65,536色のフルカラー対応になったり、非ハイレゾカラー対応になったり、グレースケール対応になったり、モノクロ対応になったり…と、様々にその姿を変える。ま、当たり前と言えば当たり前のことだが、これの弊害も起こったりはする。たとえば、ゲームアプリなどで独自の方式でカラー色数を拡張しているソフトなどの場合、仮想Graffiti部分がちゃんと対応出来なくて、不思議な色表示になってしまうなんてこともある。でもまあ、これは極めて特殊な例と言える。もうちょっとしばしば起こる現象としては、アプリケーションの切り替え時に仮想Graffiti部分が再描画を繰り返すためにチカチカした感じがする。これは仕様なので「仕様はしようがない」のだが、ちょっと気になる人は気になるかも。この辺のニュアンスはご自分で確かめてもらうのが早いかも。実際にはこのマシンには「Dragonball Super VZ(66MHz)」というPalmOSマシン史上最速のチップが搭載されているので、アプリケーションの切り替えも概ね高速だと言ってもいいのだが、前述の仮想Graffiti部分のチラつきのために、妙に時間食ってるような気もする。ま、気のせいなのだが。ところで、これと似たような現象は過去にもあった。CLIEが初めてハイレゾ画像に対応した時のことだ。アプリ切換のたびに画像描画に手間取って、あの時は具体的に切り替え速度が遅くなったりもしたものだが、結果的には今関弘明さんのおかげでその切り替え速度の低下問題は解決した。今回は決して切り替え速度が落ちる訳じゃない(それどころかこれまでのものよりも高速らしい!)のだが、チラチラが気になる人のための解消ソフトなんてものが登場するかも。しないかも。ま、実用性に問題はないだけに、気になる人がどれぐらいいるか、次第だと思う。



【訂正】
 こちらも、PalmNinja9号から入った最新の情報によると、これは、標準で入っている環境設定アプリの『ハイレゾアシスト』を有効にすることでほとんど解決してしまうらしい。  もともとこの仮想Graffitiのまばたき現象は、アプリを切り替える時にいちいちチェックに行っているために発生するものなので、ハイレゾアシストをオンにしておくことで、ハイレゾアプリ同士を切り替えた場合は、まばたきしないそうだ。ただし、ローレゾアプリの場合には、どうしても画面を書き換えてしまうので、まばたきは消えないそうだ。


●ソフトウェアキーボードの自立

ところで、仮想Graffitiが採用されたことで、これまでは不可能だった使用法も可能になった。それが、仮想Graffiti部分の替わりにソフトウェアキーボードを表示してしまう方法だ。もちろんGraffitiに慣れてしまったユーザーではなく、初めてPalmOSマシンを使う人を想定した使い方と言える。でも、これ、そういう人のためにはとっても便利かもしれない。



●VZの威力

さて、「Dragonball Super VZ(66MHz)」については、それほど多数のソフトウェアを試せた訳ではないのだが、アプリ切換や画像系の表示時間などで、かなり高速な印象を持った。でも、それ以上は不明だ。

●ワイドな液晶

320×480ドットのハイレゾ液晶はとっても美しい。現状では唯一の方式に対応したソフトであるPhotoStandを使って、画面一杯にハイレゾカラー液晶を表示してみると、とても爽やかな爽快感を感じられる。もちろん、そこに表示した画像が爽やかな南の島の海辺の映像だったせいだが、これはやっぱり見慣れない広大な画面表示の方式で、しかもハイレゾだけに印象的だ。下図のように、まさにPhotoStand(写真立て)として使った時にはかなり楽しそうだ。



…ま、それほど長い時間試した訳ではないので、今日はこんなところで。しかも、機長のチェックミスもあり得るので、間違いがあったらすまぬ!とにかく自分の目で確認するのが一番だ。





【総評】

 気づいただろうか?このマシンには、これまでのPalmOSユーザーやCLIEユーザーが戸惑うような機能が多数ついている。それでもどうしてもこのマシンが欲しい。無理をしてでも使いこなしてやる!というユーザー以外は、無理してこのマシンに乗り換える必要はないと言えるし、その設計の基本からして、既成ユーザーを最初っからターゲットにしていないことがわかる。

 では、どんな人間がこのマシンのターゲットなのか?当然だが、初めてPalmOSマシンやCLIEに手を出そうという人間がそのメインターゲットだろうと思われる。これまでまったくPalmOSマシンやCLIEに興味がなかった人間が、このマシンをきっかけにPalmOSマシンやCLIEに興味を持つマシンとして、このマシンはとてもよく出来ている。PalmOSマシンの基本思想から離れすぎていないのか?という疑問は当然のようにあるだろうが、それはこのマシンの目的からするとかなり自然なこととも言える。PalmOSマシンの基本思想そのままではPalmOSマシンに興味を持てない人たち(PalmOSマシンをPIMとして地道に使うつもりはない。出来れば楽しい趣味のマシンとして使いたい。もともとザウルスやPocketPCの方が魅力的だと思っていた。…などのモチベーションを持つ人たち)をターゲットとしている以上、これまでのPalmOSマシンの基本思想から出来うるかぎり離れようとするのは当然だ。

 そういう意味では、例えば、これまでの多くのHandspring社のマシンが、PalmOS思想を順守しすぎるあまり、本家Palm社のマシンと多くの面でバッティングしたのとは違い、本家とのバッティングも少ない。そういう独自性こそがSONY社がPalmOSプラットフォームの中でもやりがいを感じている部分だろうし、Palm社としてもSONY社を大歓迎できている部分だったりするはずだ。

 では、SONY社は「PEG-NR70/70V」で示したように、今後もどんどんPalmOSマシンの基本思想から離れ続けていくのだろうか?…それはある意味、当たっているとも言えるかもしれない。というのは、この「PEG-NR70/70V」は過去の同社の歴史から見て、まだまだ何度もバージョンアップを重ねて、今後もますます進化を重ねていくだろうと思うからだ。と、同時に、SONY社のことだから、それと交互に、あるいは同時に「T600/400」シリーズのような、もっとシンプルな構成の、かなりPalmOSマシンの基本思想に沿った製品ラインも発売し続けていくのではないかと思われる。どうだろう?このあたりは機長の想像も加わっているので、間違っていたらすまない。

 ま、何はともあれ、このマシンがワクワクドキドキする、SONYらしいとっても気になるマシンであることには変わりはない。