不思議な記事がまたぞろ出てきたよ。

Date: 2002-03-27 (Wed)

by 機長

■PalmとHandspringに立ちはだかる“ワイヤレス”という壁(ZDNN)

 また来たな、という感じの不思議な記事。これ、内容を読むとわかるが、Microsoft社の息がかかった調査会社もしくは、とくにMicrosoft社とは関係ないが、「デンマークのコンサルティング会社」が発表した記事を意図的にZDNetの記事としてアップした記事であることがわかる。

 だいたい、調査会社のStrand Consult社って、この種の記事ではほとんど初めてその名前が登場したけど、なんでよりによって「デンマークのコンサルティング会社」の調査結果を使って、こんな記事を書いてZDNNに配信したんだろうか?

   ちなみにGoogleの日本語ページ検索で調べてみると、この調査会社の名前はメジャーサイトの配信記事では携帯電話関連で二度ほど登場するだけだ。

●ヨーロッパでは iモードは必要ない? (japan.internet.com)2001.12.28 ●WAP携帯利用者の不満,責められるべきは?(ZDNN)2001.05.25

 前者はまあ、さもありなんという記事だが、注意すべきはヨーロッパのローカル情報であることと、iモードの欧州進出を否定してヨーロッパの携帯電話環境を絶賛していること。

「ヨーロッパでは、ショート メッセージ サービス(SMS)とワイヤレス アプリケーション プロトコル(WAP)アプリケーションが広く普及しているが、こうしたアプリケーション開発技術は iモードより自由な構成になっている」

 後者の記事では、世界的にあまり評判の芳しくないWAP規格を珍しく褒めている調査会社の代表格として紹介されていること。ここでも同社は携帯電話絡みで登場し、ある種の利益を代表しているようにも見える。

 実際、Stand Consult社のサイトを開くと、同社が「Media」「IT」「FINANCE」「TELCO」の4つの項目を重視していると書いている。携帯電話は同社にとって非常に重要なテーマらしい。しかも、それほど世界的に評価を受けている企業とも思えない。(Googleのノーマル検索でも、あまりメジャーなニュースサイトでの紹介は少ない。そんな企業が発表した調査結果をもとにこの記事は書かれている。)

 そんな企業の調査結果を、ZDNNが今あえて取り上げる意味とは何だろう?(しかも、この記事の記者はMatthew Broersmaという人で英国ZDNNの記者なのも気にかかる。英国と米国では携帯電話の環境がずいぶんと違うからだ)

 しかも記事を読んでもらうと一番早いのだが、とくに目新しい情報もなく、携帯電話は凄い市場を築いているし、爆発的な売れ方をしている。そこにPDAがワイヤレス機能を付けて参入しても勝ち目はない。生き残ることすら出来ないだろう。ただし、Microsoft社は大丈夫!と結論づけている。

 なお、Microsoft社が勝ち残れる理由とは、「Palm OSよりもずっと大きなユーザー基盤をPCで既に確立しており,それを自身のPDAソフトに活用できるだろう」ということだが、それでも同社が失敗に失敗を重ねている理由を、Stand Consult社のアナリスト(わざとじゃないとは思うが、Nicolaj Nielsenという、世界的にメジャーな調査会社と同じ名前を持った紛らわしい名前をしている。デンマークには多い名前なのかもしれないが…)はどんな風に説明するのだろう?これとほぼ似た論調は、Microsoft社がハンドヘルド市場に参入した1996年以来、毎年メジャーなニュースサイトに載り、そのたびに、Microsoft社がPalmOSに勝つ期日だけがどんどん後退している。彼らの予測が正しければ、とっくの昔にPalm社は潰れているはずだったが、最近のメジャー調査会社の調査結果では、早くても2005年まではPalmOSの天下は続くとまで言われた。(この予想が正しいかどうかはちょっと謎ではあるが…)

 あと、この記事のうさんくささは、米国のハンドヘルド市場においてもついに大きな勢力となりつつあるSONY社の名前を意図的に外している点にある。この記事がもともと、日本や米国に比べてまだCLIEの浸透が薄いヨーロッパ地区に限定した分析なのだとしたらわからなくもないが、あえてSONY社の名前を外して、Palm社とHandspring社の名前を並べているのは、PalmOS陣営がいかにも新興企業だけに支えられており、Microsoft社の前には藁屑のようにはかないものだという印象を植え付けたいための筆者の作為ともとれなくない。

 とにかくこの記事にはうさん臭さがつきまとう。だいたいが、筆者の言う通りに、巨大な携帯電話市場と膨大な資金を持つMicrosoft社の前に、Palm社とHandspring社が風前の灯火なのだとしたら、何ゆえ、こんな記事をあえて書く必要があったのだろうか?この2社の悪い風評を流したくて流したくてたまらない企業や勢力があるとしか思えない。

 本当にこの種の「ばったもん」的調査結果と、それをメジャーサイトが報道するという不思議な現象は困りものだ。これを読んだ企業が、あまり深く考えずにPalmOSとの関係を切ろうとしたりするのを狙った戦略だと思うが、くれぐれもダマされないでもらいたい。

 ただし、この記事からひとつだけ嬉しい兆候を読み取ることが出来る。Microsoft社は焦っているらしいってことだ。