Palm社の完全復活と、MS社の遠吠え

Date: 2002-01-22 (Tue)

by 機長

■分離完了のPalm OS事業部,MSとの対決の意気込みは…… (ZDNN)

 この丸一日ほどのPalm社の大きな動きを、かなり詳細にリポートした記事だ。関係コメントも多い。

 すべてはこのニュースから始まった。

「Palmは1月21日,OS部門の分離が完了したと発表した」

 同部門のトップ(一部にはすでにCEOという表現もあった)には、かねてから言われていたように、ソフトウェア部門のキーパーソンとして、元AT&T社、その昔はApple社にいたDavid Nagelが就いた。



 ただし、同部門が「分離」だけなのか、「スピンオフ」したのかは、記事によって違っている。まだ、企業名その他の詳細が見えてきていないところを見ると、「分離」という概念上の問題らしい。正式なスピンオフはこれからか?

 そして、これまた以前から心配されてきたように、ハードウェア部門に関しては、そのトップたる人材がいまだ見つかっていない(昨年秋にはJeff HawkinsやJohn Sculyの名前まで挙がった)ようで、今回の「分離」においてもハードウェア部門に関する示唆はほとんどない。やはり火中のCLIE、もとい、栗を拾おうとする人間はなかなか見つからないらしい。というわけけで、完全なる「分離」までにはもう少しかかるのか?

 もうひとつのニュースとも言うべき、NPD Intelect調べの市場シェア調査結果は、かなり衝撃的だったし、その発表のタイミングは、Nagelという男のしたたかさを暗示させてくれる。

「Microsoftはこれまでのところ,我慢を強いられている。同社の市場シェアは20%,対するPalmのシェアは50%以上だ」

 もちろん、販売戦略とコメントだけはいつも積極的なMicrosoft社陣営は黙っていない。

「われわれは,Palmとは根本的に異なったアプローチを採っている。簡素さか機能かのどちらかの選択だ。基本的なスケジューラが欲しいのか,それ以上のものが欲しいのかを選ばなければならない。われわれは,ユーザーが(PDAに)より多くの機能を望んでいると考えている」(by Microsoft社モバイリティグループのプロダクトマネジャーであるEd Suwanjinder)

「Palmは,スケジューラ機能しかいらないユーザーがほとんどの,ローエンド市場をターゲットにしているようだ。われわれは,モバイルに本物の機能性を求めるプロフェッショナル層をターゲットにしている。われわれは,非常に満足しているし,ワクワクしている。最終的に成功するのは,われわれのプラットフォームだろう」(上同)

 いつもながらの反論だ。このキャッチフレーズを使い初めて、同社はすでに6年目に入る。もちろん、6年前に比べれば、同社のシェアや勢いは増したし、少なくともメディアでの露出や援護記事は多い。だが、相変わらず具体的な数字をあげきれていない。それは事実だ。

 しかし、以下の事実もまたPalm社の否定しがたい現実だ。

「またMicrosoftとは異なり,Palmには頼りになるWindowsのような数十億ドルの売上を上げる製品がない」

 だが、総体として、昨年春の新製品発表タイミングのミスから始まった膨大な不良在庫は予想を超えるペースでさばききれたらしく、Palm社陣営は再び、業界リーダーとしての地位を不動のものにしつつある。そういう意味で、以下のコメントは比較的冷静な分析だと言える。

「われわれは,全体としては,Palmが戦略をうまく策定していると考えている。業界トップの地位を背景にした同社の戦略実行能力はさらに高い。しかしながら,競争の脅威が迫ってきている」(by J.P. Morgan社のアナリスト、Paul Coster)

 最後にPalm社ソフトウェア部門の新しいリーダーであるNagelは、NeXT社から復活後に、奇跡的なレトリックを使ってApple社を復興したSteve Jobsばりのコメントを発表している。

「われわれは,Microsoftに取って代わるつもりはない。Microsoftは,デスクトップ市場を完全に独占している。われわれは,PCの良き友人となりたいのだ」(by David Nagel)

「われわれの戦略は,仮に環境がMicrosoft中心の環境なら,同社のハードウェアや文書との連動性を高めていきたい。それも彼らよりもうまく」(上同)